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桂は額に手を当ててまた溜息を漏らす。アヤメは両手で口を押さえて笑い声が漏れるのを防ぐ。
「それは心配ですねぇ。大切な三津さんが体を張った勝負をするなんて桂様からすれば大問題ですもんねぇ。」
「話し合うと言ってたのにこれだよ……。最初から不安しかなかったが,いきなりあの光景見せられると連れて来た私が馬鹿だったと思うしかないよ……。」
どうして心配してるのが伝わらないんだろうね?と愚痴を溢してその場を後にした。
桂の気持ちなど露知らずの三津はしくしく泣きながら久坂に膝枕をされていた。【生髮藥】胡亂服用保康絲副廠,可致嚴重副作用! -
「話し合う為に一旦落ち着いて欲しかっただけなんですぅ……。高杉さん止めなアカンって思ったらあぁなってたんですぅ……。」
「それだけの勢いで廊下を走るのがまず間違ってるのにそれで三津さんに突っ込んだあいつが悪いんですよ。」
優しい兄上は優しい手つきで上から顔を覗き込んで腫れ上がった額に薬を塗り込んでやった。
三津は痛みからぎゅっと目を瞑って両手もしっかり握り込んで口をへの字に曲げた。
『面白い顔……。』
吹き出しそうになるのを堪えて手当てを続けた。「そんな無防備な姿晒してるのバレたら更にお仕置きされますよ?」
戸が開くのと同時に聞こえてきた声に三津ははっと目を開いた。
思ったより近くに久坂の顔があったのに驚いて勢い良く体を起こそうとしたが,
「私にまで頭突き食らわす気ですか。」
そこは咄嗟に三津の両肩を押さえ込んだ久坂のお陰で二次被害は免れた。
「ご……ごめんなさい……。思ったよりお顔が近かったもんで……。」
「あぁ照れたんですか。大丈夫,私は取って食ったりしませんからね。」
安心してくれと笑った。信頼する兄上がそう言うんだもの。三津もそうですよねーと緩みきった顔で久坂を見上げた。
「私も取って食ったりしないから膝枕させてもらえません?」
にこにこ笑いながら側に腰を下ろした入江に三津は疑いの眼差しを向けた。
「お前は信用ならんな九一。前に三津さんの指舐めたろ。」
久坂もじっとりした目で入江を見た。
「舐めたんじゃない。吸ったんだ。あれは手当てだったし下心なんかないさ。
それにしても何で来たんです?追い回されるだけなのに。」
入江はこれ以上久坂に掘り下げられないように話をすり替えた。
「逃げ回ってるだけやと何も変わらんからちゃんと話そうと思って。
だからもう落ち着いたんで行ってきますね。」
三津はゆっくり体を起こすと額のたんこぶをさすった。なかなか腫れ上がっている。と言う事は高杉もだいぶ腫れてるはずだ。
「高杉さんちゃんと冷やしましたかね?」
三津が心配そうに呟くも二人はあいつは唾つけときゃ治るよと鼻で笑った。
「話し合いたい三津さんの気持ちは分かりました。でも何かあっては困るので付き添いますね。
玄瑞お前は出掛けるんだろ?」
だったら俺に任せろと言わんばかりの目で久坂の目をじっと見る。
「ちょっと遣いに出るだけですぐ戻る。本当なら乃美さんに任せたいとこだけどねぇ……。」
俺は信用してないからなと視線で返す。
三津はその側で乃美さんは最終手段ですと呑気に笑っていた。
「では兄上行って参ります!」
元気に笑って部屋を出ると,
「三津さぁぁぁんっ!!!」
早速煩い声と足音がこっちに向かって迫ってくる。
「だから走んなっつってんだろが!」
そんな高杉の背後から吉田は竹刀を振り下ろした。頭に強烈な一撃を食らった高杉は頭を押さえてしゃがみ込んだ。
『何故竹刀……。』
三津は顔を引き攣らせながらも暴走を止めてくれた吉田に心の内で感謝した。
「三津さん良かった。ちゃんと牛使いがついてますね。これなら安心して話せるでしょう。」
「何で九一は三津に付いてるんだろうね?本来そこは俺の位置だけど。」
気に食わないと厳しい顔つきで竹刀を肩に担いだ。
「あの,何で竹刀?」
気になってしまって高杉との話に集中出来ない。先に理由を聞いてすっきりしたい。
だが話の腰をおるんじゃないと吉田に笑顔で睨まれた。
「急に走り出すから手が届かないんだ。でも瞬発力には自信あるから腕は届かなくともこれなら届く。